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東京地方裁判所 昭和63年(特わ)1431号 判決 1988年12月07日

本店所在地

東京都足立区西新井七丁目一〇番九号

三英商事有限会社

(右代表者代表取締役 山口博)

本籍

東京都台東区三ノ輪二丁目一〇三番地

住居

同都足立区西新井七丁目一〇番九号

会社役員

山口博

大正一五年一二月一四日生

右の者らに対する法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官井上經敏同下川徳純出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人三英商事有限会社を罰金四〇〇〇万円に、被告人山口博を懲役一年二月にそれぞれ処する。

被告人山口博に対し、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人三英商事有限会社(以下、被告会社という。)は、東京都足立区西新井七丁目一〇番九号に本店を置き、食品・日用品雑貨の卸売を目的とする資本金五〇〇万円の有限会社であり、被告人山口博(以下、被告人という。)は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括しているものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、仕入金額を水増し計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ

第一  昭和五八年一〇月一日から昭和五九年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億五九九二万三六〇五円あった(別紙一の(1)修正損益計算書参照)のにかかわらず、昭和五九年一一月一九日、東京都足立区栗原三丁目一〇番一六号所在の所轄西新井税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四九〇四万三七八八円で、これに対する法人税額が二〇二〇万八七〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六三年押一二一六号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額六八二一万九七〇〇円と右申告税額との差額四八〇一万一〇〇〇円(別紙一の(2)脱税額計算書参照)を免れ

第二  昭和五九年一〇月一日から昭和六〇年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が九六一九万七一七〇円あった(別紙二の(1)修正損益計算書参照)のにかかわらず、昭和六〇年一一月二七日、前記西新井税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四七九万三九八〇円で、これに対する法人税額が一四三万四六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六三年押第一二一六号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額四〇六一万八〇〇〇円と右申告税額との差額三九一八万三四〇〇円(別紙二の(2)脱税額計算書参照)を免れ

第三  昭和六〇年一〇月一日から昭和六一年九月三〇日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億四四九七万九六六一円あった(別紙三の(1)修正損益計算書参照)のにかかわらず、昭和六一年一一月一三日、前記西新井税務署において、同税務署長に対し、所得金額が四一一〇万七七二八円で、これに対する法人税額が一六七九万六五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(昭和六三年押第一二一六号の3)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって不正の行為により、被告会社の右事業年度における正規の法人税額六一七七万三〇〇〇円と右申告税額との差額四四九七万六五〇〇円(別紙三の(2)脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

判示全事実につき

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書三通及び大蔵事務官に対する質問てん末書一七通

一  平井修道、山口由紀子、楫春枝、山口隆由、煙山孝育(二通)、目黒悦喜(二通)、佐藤玄(四通)、小川勝男、守山輝夫、野村利夫、佐々木もと、康玉錫、長岡照三、木村貞夫、横山キミエ、近藤裕彦、任鶯木、大谷りつ子の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  収税官吏作成の左記の各調査書

1  当期商品仕入高調査書

2  手数料調査書

3  雑費調査書

4  受取利息調査書

5  雑収入調査書

6  有価証券売買益調査書

7  受取配当調査書(但し、判示第二、第三の事実についての証拠である。)

8  支払利息調査書

9  事業税認定損調査書

一  検察官作成の昭和六三年六月二〇日付捜査報告書

一  西新井税務署長作成の昭和六二年九月三日付証明書

一  収税官吏作成の領置てん末書

一  登記官作成の商業登記簿謄本(但し、被告会社の関係での証拠である。)

判示第一の事実につき

一  押収してある法人税確定申告書(59/9期)一袋(昭和六三年押第一二一六号の1)

判示第二の事実につき

一  同法人税確定申告書(60/9期)一袋(同押号の2)

判示第三の事実につき

一  同法人税確定申告書(61/9期)一袋(同押号の3)

(法令の適用)

被告会社の判示各所為は、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項に該当するところ、情状によりそれぞれ同法一五九条二項を適用し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、同法四八条二項により各罪につき定めた罰金の合算額の範囲内において被告会社を罰金四〇〇〇万円に処し、被告人山口の判示各所為は、いずれも法人税法一五九条一項に該当するところ、所定刑中懲役刑を選択し、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから同法四七条本文、一〇条により、犯情の重い判示第一の罪の刑に法定の加重をした刑期の範囲内で被告人山口を懲役一年二月に処し、後期情状により、同被告人に対し同法二五条一項を適用して、この裁判の確定した日から三年間右刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、パチンコ景品取引業を営む被告会社の代表取締役として同社の業務全般を統括していた被告人山口が、同社の業務に関し、景品交換所からの換金用パチンコ景品の仕入価格を水増計上したり、株式会社丸新との共同経営にかかる景品交換所の利益分配金を除外するなどの方法で所得を秘匿し、被告会社の昭和五九年九月期から昭和六一年九月期までの三事業年度分合計一億三二一七万円余の法人税をほ脱したという事案であって、ほ脱額は高額で、ほ脱率も平均七七・四パーセントにも及んでおり、その犯行の動機は、パチンコ景品取引業においては換金所からの仕入れが現金払いでなければならず、それに必要な資金は銀行融資によって賄わねばならないところ、担保に供すべきさしたる資産を保有していなかったため、裏担保用の仮名定期預金等を設定し、個人用財産も蓄積しておきたかったらというもので、特段酌むべきところはなく、所得秘匿の手段・方法も計画的かつ大胆であることに鑑みると犯情は悪質であり、組織暴力団関係者との交流状況やこの種事案の性質をも併せ考えると被告会社及び被告人の刑責を軽視することは許されない。

しかしながら、被告会社及び被告人においては、本件の非を認めて本件起訴対象以前の分も含めて修正申告をし、本税及び重加算税等の附帯税合計約三億三〇〇〇万円程を納付したこと、税務署長の経歴を有する税理士を顧問に迎え被告会社の経理体制の改善に努力する旨誓っていること、その他、被告人の年齢など弁護人指摘の被告会社及び被告人にとって有利な、又は、同情すべき事情も認められ、これらの諸事情を総合勘案すると、被告会社に対しては、主文掲記の罰金刑を科し、被告人については、直ちに実刑に処するよりは今回に限り懲役刑の執行を猶予し、自力更生の機会を与えるのが相当であると判断して、主文のとおりの刑を量定した次第である。

(求刑 被告会社につき罰金四四〇〇万円、被告人につき懲役一年二月)

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 中野久利)

別紙一の(1) 修正損益計算書

三英商事有限会社

自 昭和58年10月1日

至 昭和59年9月30日

<省略>

別紙一の(2) 脱税額計算書

三英商事有限会社

自 昭和58年10月1日

至 昭和59年9月30日

<省略>

別紙二の(1) 修正損益計算書

三英商事有限会社

自 昭和59年10月1日

至 昭和60年9月30日

<省略>

別紙二の(2) 脱税額計算書

三英商事有限会社

自 昭和59年10月1日

至 昭和60年9月30日

<省略>

別紙三の(1) 修正損益計算書

三英商事株式会社

自 昭和60年10月1日

至 昭和61年9月30日

<省略>

別紙三の(2) 脱税額計算書

三英商事有限会社

自 昭和60年10月1日

至 昭和61年9月30日

<省略>

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